広葉樹を活用した『HIDA WOOD PLANKプロジェクト』始動!飛騨市の取り組みとともにご紹介します!
蒸し焼きと燻製が同時に楽しめるプランクBBQ。中でも天日干しの美山杉板を活用した『MIYAMA WOOD PLANK』は、キャンパーやグランピング施設からも多くの支持を集めています。そんな中、ふと思ったことがありました。「杉はビター風味で王道のプランクだけど、杉以外の木だとどうなるんだろう?スモークチップだと桜やクルミが有名だけど、それらの“広葉樹”をウッドプランクにしたら面白いかも…」と。
思い立ったら即行動です。「広葉樹といったら飛騨でしょ!」ということで、一路岐阜県飛騨市へと向かったのでありました。 ただ、最初はそんなシンプルな発想からのスタートでしたが、実際に現地で広葉樹の現状と活用の取り組みを知り、そこに携わる人たちの熱い想いに触れたことで、本格的に『HIDA WOOD PLANKプロジェクト』がスタートしていくことになるのです。前編となる今回は、そのプロジェクトに至るまでの軌跡をお送りしていきます!
▼後編はこちら
『HIDA WOOD PLANKプロジェクト』後編|桜と栗の木でプランクを作ってみた!
▲古い町並みが美しい飛騨古川。自然と共生してきた素朴な暮らしも魅力的な町です
広葉樹が呼んでいる!いざ、飛騨へ!
岐阜県最北部にある飛騨市。森林が占める割合はなんと驚異の約94%!しかもそのうちの約68%が天然の広葉樹なんです!すごい!
・・・という、浅い知識だけを携えて(笑)、飛騨市に向かったNewie商品開発チーム。まずは広葉樹のことをちゃんと知ろう!ということで、飛騨市役所農林部林業振興課の竹田課長さんにお話を伺うことになりました。
案内された市役所のミーティングルームは、内装のほとんどが広葉樹からできていて、さすが飛騨市だ!と感心させられました。
▲個性溢れる広葉樹の魅力にいきなり引き込まれます(画像提供:飛騨市役所)
豊富な広葉樹資源をフル活用していてすごい!とこの時は単純に思いましたが、その内実を聞いてみると、広葉樹を取り巻く厳しい現実が見えてきたのです。
実は活用しきれていない広葉樹!
竹田課長のお話でまず驚かされたのが、飛騨市内の広葉樹は細い「小径木」が多いため、家具などの用材になるのは、伐採した広葉樹の中のわずか6%程度しかなく、他の約94%は製紙や燃料用の安価なチップにしかなっていないという現実でした。
▲「小径木」(写真右)とは胸の高さの直径が26cm以下の木材のこと。家具等の用材には細くて向かない(画像提供:広葉樹コンシェルジュ及川さん)
▲小径木は粉砕され、チップとなっている(画像提供:飛騨市役所)
杉などの針葉樹は、真っ直ぐで太さも長さも安定し、建築用などの用材として扱いやすいけど、広葉樹は曲がっているうえに太さもなく(小径木)、用材として活用できる部分が非常に少ないのがその理由です。また針葉樹と違って樹種も多様なので、伐採後の仕分け作業で時間がかかって価格も高くなる。そのため、ごちゃ混ぜでチップにしてしまうほうが割に合うというのが現状だといいます。
▲上が針葉樹で下が広葉樹。用材としての扱いやすさは一目瞭然です
そこで飛騨市は、民間会社との協働で「十分に活用されていなかった小径広葉樹に新たな価値を加え、新しい経済循環を作り出そう!」という取り組みを始めることになります。その中でまず目をつけたのが、従来の流通の仕組みによるミスマッチ問題でした。
価値ある広葉樹を多様なニーズに届けよう!
今まで山で伐採した広葉樹は、伐採業者の基準でその場で仕分けされ、これは使えるなーって木を製材所へと運んでいました(これが伐採した木のたった6%程度)。その製材所から、木工作家や家具工房へと用材が販売されていましたが、この時点でミスマッチが生まれていたのです。
いわゆる川下に当たる木工作家さんたちは、小径木でも広葉樹独特の味のある材を求めていたのに、製材所には求めるものが少なく、仕方なく外国からの輸入材を購入していたんです。もったいない!
一方で、川上に当たる伐採業者は、まさか川下でそんなニーズがあるとは思いもしないので、本来は活用できるのに、そのほとんどをチップに回してしまっていたのです。まさにミスマッチ!
▲従来の流通の仕組みでは、価値ある材が作り手まで回っていなかった(画像提供:飛騨市役所)
そこで飛騨市は、川上、川中、川下の関係者を巻き込んだ官民連携組織「飛騨市広葉樹活用推進コンソーシアム」を結成し、川上での仕分け作業に基準を設けました。そうすることで、川下のニーズに合った原木がちゃんと川中に降りてくるようにし、その原木の見える化のために中間土場も整備します。さらには「広葉樹活用コンシェルジュ」も配置し、川下の多様なニーズと原木をつなぐ取り組みを始めたのです。
▲新たな仕組みにより、チップになるはずだった広葉樹に新たな価値が生まれます(画像提供:飛騨市役所)
そんな「川下の多様なニーズ」の中にポコっと現れたのが、まさに「ウッドプランクで広葉樹に新たな価値を!」と飛び込んできた私たちだったのです(笑)
HIDA WOOD PLANKプロジェクト始動!
小径広葉樹に新たな価値が加わり、経済循環の新たな形ができれば、適正に森を調査・管理できるようになって(価値ある森づくり)、担い手も増やすことができる。まさに、実益と公益性を兼ね備えた持続可能な取り組みが、飛騨の広葉樹活用プロジェクトだったのです。
▲飛騨市と森林総合研究所との共同による更新状況のモニタリング調査の様子(画像提供:飛騨市役所)
今、私たちが扱っている『MIYAMA WOOD PLANK』も、元は岐阜県山県市で衰退したかつてのブランド杉板「美山杉板」に新たな価値を創造し、地域産業を持続可能なものにするためのプロジェクトでした。
▼詳しくはこちら美味しくて環境にもいい!プランクBBQ用杉板「ミヤマウッドプランク」誕生秘話
今度はこの飛騨で小径広葉樹を活用してプランクを作れば、チップになるしかなかった広葉樹に新たな価値を作れる上、家具や工芸品以外の可能性も生み出せる!しかも、ユーザーさんにも杉以外のプランクを提供でき、美味しく楽しんでもらうだけで持続可能な広葉樹の森づくりに間接的にでも貢献してもらうことができる!
▲「まずは飛騨の森を見てほしい」という思いから、森の見学も積極的に行なっているそう(画像提供:広葉樹コンシェルジュ及川さん)
こうして飛騨市の熱い思いを受け取った私たちは、その後も川中の製材所や、広葉樹活用コンシェルジュの方のお話を聞き、その上で『HIDA WOOD PLANKプロジェクト』を進めていったのでした。勢いで飛騨まで行きましたが、今では熱い使命感で燃えております!そう、プランクBBQのようにね(笑)
▲うまい!の数が増えるほど、森が豊かになっていくなんて素敵じゃない?
次回後編では、「実際に桜と栗の木でプランクを作ってみた!」と題し、川中での製造過程をお伝えしていこうと思います。乞うご期待!
後編はこちら
▼飛騨市の取り組みについてくわしくはこちらから
飛騨の森と君とつむぐ https://hidatsumu.com/
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