『HIDA WOOD PLANKプロジェクト』後編|桜と栗の木でプランクを作ってみた!
「広葉樹のウッドプランクを作りたい!」という私たちの想いと、「広葉樹に新たな価値をつけて活用していきたい!」という飛騨市の熱い想いがマッチングし、ついに動き出した『HIDA WOOD PLANKプロジェクト』。まずは燻製チップでも実績のある「桜」と「栗」の木からプランクを作っていくことになりました。
後編となる今回は、実際の現場での木材の選定から製材、そして加工に至るまでの工程をお送りしていきます。これを読めば、たった一枚の板がどんな風に、そしてどんな人たちの愛によってできあがっているかがわかります!ぜひご覧ください!
▼前編はこちら
広葉樹を活用した『HIDA WOOD PLANKプロジェクト』始動!飛騨市の取り組みとともにご紹介します!
(画像提供:広葉樹コンシェルジュ及川さん)
川中に潜入!中間土場にて木を選定しよう!
まずウッドプランクができるまでの経路をおさらいしておきましょう。
いわゆる“川上”である山で広葉樹を伐採し、木の仕分け作業が行われます。飛騨市の新しい仕分け基準によって、価値ある原木が“川中”へ、それ以外のものはチップ工場へと送られます。木工作家さんや、私たちのような“川下”は、川中で用材を仕入れ、本来チップになるしかなかった小径広葉樹に新たな価値をつけていくのです。
ということで、訪れたのが飛騨市古川町にある(株)西野製材所さん。いわゆる“川中”に当たる場所で、全国でも珍しい広葉樹専門の製材所です。その製材所に併設しているのが(株)柳木材さんで、山で仕分けされた原木が集まる中間土場の役割を担っています。この川中で、原木販売と製材がワンストップでできるようになっているんですね。
西野さんの案内で土場に行くと、そこには多種多様な広葉樹の原木がズラリと並んでいました。それはもう圧巻の光景です!
▲飛騨の広葉樹活用の重要拠点
木を見ても何の樹種かもわからない私たちでしたが、西野さんが丁寧に説明をしてくれました。針葉樹と違って、広葉樹は本当に多くの種類があり、サイズや形、材質も様々で、広葉樹らしい個性的な原木が溢れています。整然とした針葉樹は大量生産に向いていて効率的であるけど、どこで作っても同じ規格のものになります。一方で、広葉樹は個性的で扱いにくい反面、地域の特性が現れやすく、個性的であるがゆえに付加価値もつけやすいとのこと。
▲西野製材所の西野社長。多種多様な広葉樹を、愛情を持って丁寧に解説してくれました
加えて西野さんは、「木は光合成で二酸化炭素を吸って酸素を溜め込みます。でも老木になると酸素の蓄積量が衰えるので、ある程度伐って若返らせる必要があるんですよ。飛騨の山は、広葉樹が天然更新できる貴重な山です。育てながら伐っていくのが今の広葉樹林業の在り方ですね。」とも教えてくれました。
▲伐採は冬が本番(画像提供:広葉樹コンシェルジュ及川さん)
早速私たちは、今回プランクにしてみたい「桜」と「栗」の原木選定に入りました。もちろん、できるだけ家具などにするにも扱いにくいものを選ぶようにしました。チップと用材の狭間、そこにこそプランクの役割があると思っているからです。
▲原木に書かれた直径と長さを見て選定します
▲大きな重機で私たちの木が軽々と運ばれていきます。大迫力で興奮しました!
土場である柳木材さんと、製材所である西野製材所さんの広葉樹活用の想いについては、以下にも詳しく書かれています。ぜひこちらも併せてチェックしてみてください。
飛騨の森と君とつむぐ
「柳木材」https://hidatsumu.com/interview/yanagi/
「西野製材所」https://hidatsumu.com/interview/nishino/
製材所に潜入!原木から板材を作り出そう!
製材所に運ばれた原木はベルトコンベアに乗せられて、まず皮剥き作業に入ります。
▲大きな機械で、剥くというより削り取る感じ
綺麗に皮が取れたあとは、そのままコンベアを流れてカット作業に入ります。カットの機械に何度も原木を通していくと、みるみるうちに板になっていきました。理屈ではわかっていても、原木から板がこんなふうにできていたことに、新鮮な感動がありました。
▲決まった厚みでカットして板にしていく
▲切れた板は乾燥用に間を開けて積み上げていく
このあとは天日に晒して、乾燥するのを待ちます。そして約1ヶ月ほどのちに再訪し、プランクに向けた加工作業に入っていきました。
加工場に潜入!板を磨いてカットしていこう!
訪れたのは、柳木材さんの土場の脇にある「ひだザイの加工所」という小さな加工場です。ここでは、現役の大工さんである、代表の原さんがフローリング材をはじめ様々な板材の加工を行なっています。川中で作られた板を加工して販売する、いわゆる“川下”に当たる場所です。
▲多様な広葉樹で作られた入口と看板がかわいいです
原さんは、規格品を組み立てるだけのハウスメーカーに違和感を感じ、自分の手で木に触れ、加工し、それを提供することを大切にされている方です。飛騨市の広葉樹活用の取り組みを知り、山の中での伐採や更新の作業も目の当たりにし、「自分にできる役割はなんだろう?」と考え、この工房を作ったのだそう。
▲壁には、飛騨の広葉樹サンプルがびっしり並びます
本当に木への愛情が溢れていて、お話ししているだけで私たちも木の見方が変わってきました。やはり、作り手さんの顔を見て、大切にしていることを知ることはとても大事なことですね。
そんな原さんに、乾燥済みの桜と栗の板を加工してもらいます。樹種によって反りや曲がりが違うので、それを一枚一枚丁寧に手押しカンナで表面を削って綺麗にしていってもらいます。
▲広葉樹の平面出しはこの手押し作業が命です。と原さんは言います
▲作業が終わって重ねると原木の形に!現代アートのよう(笑) 左が桜で右が栗です
ここからいよいよプランクのサイズにカットしていきます。まっすぐな杉板と違い、広葉樹の個性を出したいので、あえて縁はそろえず原木の形を活かします。
▲広葉樹らしく、個性ある形を残しながらカット。一枚一枚違った形のプランクに!
こうして多くの人の愛情を受けて、ついに広葉樹のプランクが出来上がりました。大した知識もなく「広葉樹といったら飛騨だ!」と乗り込んでから、飛騨市役所の竹田課長、柳木材さん、西野製材所の西野さん、そして製材所の方々と「ひだザイの加工所」の原さんのお力があって、ついに製品が完成したのです。飛騨の人たちに共通していたのは、間違いなく「広葉樹への愛」でした。その愛情に恥じぬよう、しっかりとこのプランクを世に送り込まねば!という使命感でいっぱいになりました。
▲最後にNewie本社にて、焼き印を押して完成です
実食!桜と栗のお味やいかに!?
早速私たちは、桜と栗の新プランクを実食してみました。燻製チップとしては安定の2種ですが、果たしてプランクBBQではどうでしょうか?
▲イベントなどで、多くの人にも実食してもらいました
実食した方達の意見をまとめると以下のような感じになりました。
〈桜の感想〉
・ほんのり甘みがあり、サクラの香りも楽しめる
・子供でも食べやすい
・風味が強めで、杉とは全く違う感じで美味しい
〈栗の感想〉
・クセがなく食べやすい。甘みもしっかりと感じられた
・まろやかなスモークさで食べやすい。爽やかな香り
・鼻抜けの香りが、ほんのり栗って感じがしてよかった
結果的に、杉板のMIYAMA WOOD PLANKはビターな風味で大人向けだったのに対し、やはりこの2種は、誰もが楽しめる甘めで優しいフレーバーの王道路線だったことが確認できました。これならお子さんも含めて、より多くの方にプランクBBQを楽しんでもらえる!と確信し、正式に『HIDA WOOD PLANK』が商品ラインナップに加えることになったのであります!
このプランクを味わうときは、ぜひ飛騨に思いを馳せてみてください。製造過程はもちろんのこと、そこに携わる人たちの想い、そして飛騨の森のことを思って食べてみてください。そうすれば、きっとより一層、このプランクを美味しくいただけるはずです。
今後もNewieでは、このご縁を大切にして、飛騨の広葉樹を活用したアイテムを開発していきます!小径広葉樹の可能性を広げ、少しでも豊かな森づくりに貢献できるよう、今後もがんばりますよ!プランクも、桜や栗以外のものもテストしてく予定。次はどんな樹種の広葉樹がプランクになるのか?乞うご期待です!
ユーコンカワイ